2026.06.23

2025年「日本の広告費」を見て考えたこと

3月のデータになりますが、今回は電通さんが毎年発表している「日本の広告費2025」を見ながら、少し違った視点で考えてみたいと思います。

広告業界で仕事をしている私にとって、この資料は毎年楽しみにしているデータの一つです。

今年もニュースでは、総広告費は8兆623億円となり、5年連続で成長、4年連続で過去最高を更新。インターネット広告費は4兆459億円となり、初めて4兆円を突破。インターネット広告費が総広告費の50.2%を占め、初めて広告市場の過半数に到達。万博や世界陸上など大型イベントの影響で、プロモーションメディアも3年連続で成長、といった点が大きく取り上げられていました。

どれも広告業界にとって重要なニュースです。ただ、私が毎年気になるのは少し違うところです。「結局、どのメディアの価値が上がっているのだろう。」今回はそんな視点で数字を見てみました。

 

私が見ている3つのポイント

  • 前年比(どれだけ伸びたのか)
  • 実際に増えた金額
  • 数年前からの推移

 

前年比110%と聞くと、「すごく伸びた」と感じます。しかし、市場規模が1,000億円の110%と、4兆円の110%では意味がまったく違います。だから私は、伸び率だけではなく、「実際にいくら市場が増えたのか」を見るようにしています。さらに2025年だけを見ると、万博や大型イベントなど特殊要因もあります。そうすることで、一時的な伸びなのか、それとも継続的な変化なのかが少し見えてきます。

 

数字を見ると、やはりインターネット広告は強い

2025年のインターネット広告費は4兆459億円。前年から約4,000億円増え、広告市場全体の50.2%を占めました。広告費の半分以上がインターネットへ投資される時代になったということです。

一方で、マスコミ四媒体は2兆2,980億円。前年からはわずかに減少しています。ただ、「テレビは終わった」「マス媒体は価値がなくなった」という単純な話でもありません。テレビ広告だけでも約1兆7,500億円という巨大市場ですし、屋外広告や交通広告も回復基調にあります。

数字を見れば見るほど、「デジタルか、マスか」という話ではなく、それぞれが変化しながら共存している市場なのだと感じます。

 

インターネット広告が伸びた理由

インターネット広告がここまで伸びた理由を、「成果が見えやすいから」と一言で片付けてしまうのは少し違う気がしています。もちろん、少額から始められることや、運用しながら改善を繰り返せること、情報がリアルタイムで流通する社会との相性の良さは、大きな要因でしょう。

一方で、私がもう一つ大きいと感じているのが、媒体社の商品開発力と提案力です。

例えばTVer。テレビという既存メディアを、デジタル広告商品として進化させました。SpotifyやPodcastも同じです。音声広告自体は以前からありましたが、広告メニューの拡充や、効果検証などを通じて、広告主が活用しやすい商品へと進化しています。

さらに、媒体社は新しい広告商品の開発だけではなく、その価値を広告主へ積極的に発信しています。セミナーを開催し、事例を紹介し、効果を伝え、新しい活用方法を提案する。いわば「広告を売るための広告活動」です。

広告商品は、作れば自然に売れるものではありません。媒体社が市場を育て、広告会社が提案し、広告主が新しい活用方法を試す。そうした積み重ねが、今のインターネット広告市場をつくっているのではないでしょうか。

 

広告効果の考え方も変わってきた

もう一つ感じるのは、広告効果の考え方です。

以前は、「デジタルは成果が測れる。」「マス広告は測りにくい。」そんなイメージがありました。しかし最近では、MMM(Marketing Mix Modeling)やインクリメンタリティ分析など、テレビや屋外広告を含めた広告全体を評価する考え方が広がっています。

これからは「デジタルだから測れる」のではなく、広告全体をどう設計し、どう評価するか。そんなフェーズに入っていくのではないでしょうか。

 

既存メディアも進化している

今回数字を見ていて、個人的に一番面白かったのはここです。

伸びているのは、ラジオデジタル、テレビメディアデジタル、テレビメディア関連動画広告など、既存メディアをベースにした広告商品です。つまり、既存メディアがデジタルを取り込みながら進化している。

テレビはTVerやCTVへ。ラジオはSpotifyなどのデジタル音声へ。

既存メディアは、新しい生活者の行動に合わせて広告商品を進化させています。そして、その価値を市場へ伝え続けています。「デジタルが勝った」というより、既存メディアもデジタルを武器に進化している。そんな見方の方が、今の広告市場にはしっくりきます。

 

私なりの結論

書き始めたときは、「本当に価値が上がったメディアは何だろう。」そんな疑問からスタートしました。でも、データを見ているうちに、「価値」という言葉そのものに少し違和感を覚えるようになりました。

インターネット広告の市場は確かに大きくなっています。

しかし、それは「価値が上がった」というより、広告を届ける場所が増え、広告商品が進化し、媒体社が市場を育て、広告主の選択肢が広がった。その結果として、市場全体が拡大しているように感じます。

そして広告効果の考え方も、デジタルだけではなく、広告全体を評価する方向へ進み始めています。だから今回の数字を見て感じたのは、「インターネット広告が勝った」ということではありません。

生活者の変化に合わせて、広告商品を進化させ、価値を伝え、市場を育て続けているメディアに、企業の投資が集まっている。それが、今の広告市場なのではないでしょうか。

毎年この資料を楽しみにしているのは、広告費の増減を見るためではありません。その数字の裏側にある、市場や生活者、そしてメディアの変化を感じられるからです。来年はAIの進化も、さらに数字に表れてくるでしょう。

数字を見るのではなく、その数字が「なぜ」そうなったのかを考えることが、この資料の一番面白いところだと思っています。

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