2011.10.04

ゾウの時間、ネズミの時間

20111004今回の出張で読んでいるのが本川達雄さんの“ゾウの時間ネズミの時間”です。「生物学的文明論」も書かれていて、ナマコの事や栄養の乏しい熱帯の海での「共生」と「リサイクル」など面白い観点で解説される方の本です。

装丁の帯にあるようにゾウもネズミも心臓が20億回打って止まる!と言う衝撃的な内容ですが、生物学的な観点からの生物の生き方やその順応にたいする話が分かりやすく書かれていました。

我々人間は膨大なエネルギーを使って24時間動き回りますが、そうやって必死で時間を作って、動き回った先に何がまっているのか? 70年生きるゾウも、3年程しか生きないネズミも心臓が一生に動く回数は20億回! 心臓時計は驚くほど正確なんだそうです。

ところが、人間はその計算式で言うと40歳寿命です。 そういえば、老眼なども目の組織上の問題のようなので、避けられない事なのかもしれません。 しかし、医学の進歩や食料事情などで80歳、90歳でも元気な方も多いですね。

それよりも本川さんがこの本の中で言っている事で面白いのは、なぜゾウなどは巨大化したのか? 大きい事は良い事なのか? などデブに取っては聞くと嬉しい事も提案してます。 反対かと思っておりましたが、体が大きい方がエネルギー効率が良いんだそうです。 それをセオリーとして「島の規則」と呼ばれるイギリスの生物学者フォスターの提案したIsland Rule についての解説でした。

天敵のいない島の環境では、大陸の同種にくらべ、ネズミなど小型動物ではサイズが大きくなり、大型動物が反対に減少する事を言うのだそうですが、本川さんの視点で面白いのは、島国の日本人と大陸、例えばアメリカ人の考えかたに置き換えていた点です。 “日本の環境では、エリートのサイズは小さくなり、ずば抜けた巨人と呼び得る人物は出て来にくい。 逆に小さい方、つまり庶民のスケールは大きくなり、知的レベルは極めて高い”と「島の規則」を人間にあてはめた観点はすばらしいと思います。

人間という生物はやはり競争が無いと進化しないんですね。考えさせられました。

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